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残穢

第8章 8(主人公視点)



皆が夏油君の事をカッコイイと言っていた。

改造制服が似合う長身、整った容姿、やんちゃな見た目とは裏腹に敬語を使いこなす優等生。

ニヒルでチャーミングな笑顔とミステリアスな雰囲気に在校生達は夢中になった。

私には遠すぎて視界に捉えるだけで精一杯だった。



残穢8





「調査の為に派遣されたって人めっちゃカッコイイよね~」

「ヤバイよね!
 ウチらとタメらしいよ」

「マジで?めっちゃ大人っぽいじゃん…」

「苗字も見たでしょ?」


友人4人と理科室から教室へと戻る途中でいきなり話をふられる。
3日前に朝の集会で学校に調査が入ると発表された。
学校で良くない事が頻発していたからだ。

事前に告知された事は外部から派遣された調査員に話し掛ける事は禁止。
今の所、向こうから話しかける事も禁止になっているとの事。
当然ながら会話も禁止。
名前は非公式で、授業中、休み時間、放課後などに校内を調査して回るので騒がないようにと釘を刺された。

集会中になぜこんな告知と注意喚起がされるのか理解出来た生徒はいたのだろうか…


「…見た事ない…」

「マジで?」

「一昨日旧校舎の外階段にいたじゃん」

「そうだっけ?」

「掃除の時に騒ぎになってたよ」

「…興味無いから掃除してた」

「マジか…勿体ない」


この話題にはウンザリしている。
見たとか見てないとか、何処に居ただの居ないだの…
校内は派遣されてきた調査員の話で持ち切りだ。
調査員がいれば其処には人だかりができるらしい。


「私には関係無いし…」

「苗字は見た事無いからそんな事言えんのよ」

「言えてる~」


旧校舎から新校舎へと繋がる連絡通路を横並びになって歩く。
4階にあるこの連絡通路からは校門とそこから正面昇降口に繋がる敷地が見渡せる。
私は会話を聞き流しながら窓の外へと視線を逸らす。

相手がどんな人間だろうと私には関係無い…


「まあ、そのうち見れるよ」

「そうそう」

「…」

一方的に励まされ、もやもやしながら教室へと入れば、既に戻っていたクラスメイト達は昼食を食べる為に各々動き出していた。
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