第6章 6(主人公視点)
「何かあったら遠慮しないで連絡しなさい」
「はい、ありがとうございます」
「本当に落ち着いてるわね」
「私には特別な御守りがありますから」
校門まで見送りに来てくれた恩師にそう告げて、右手の薬指に着けている指輪を見せた。
夏油君がプレゼントしてくれた指輪を。
「へぇー」
「大学で絡まれた自称“見える側の人間”に呪われた指輪だって言われました」
「マルチか新興宗教絡みか…サークル勧誘あるあるね」
恩師は懐かしそうに呆れた笑みを見せる。
似たような思い出があるのかもしれない、
「多分…その人は見えないと思います」
「でしょうね…」
「先生は“そういうの”信じてますか?」
「見えた分だけは」
そう言うと恩師は踵を返し校舎へと戻って行った。
最後の一言が意味深で引っ掛かった。