第4章 4(主人公視点)
「特級の呪術師じゃなきゃ祓えないよ」
「え?」
「贈り主が特級の呪術師だからね
手配できるの?」
「…先生の“霊力”なら祓えるわ」
「ジャンルが違うよ
“そういうの”興味無いから」
彼女がまともな人間なら私の発言を嘘だと思うだろう。
真に受けているなら絶対に関わってはいけないタイプだ。
夏油君は私に能力の事を知られたくなかったと言っていた。
私には見えなかったが、“見えない何か”がそこにある様子を私は見ている。
だから信じられた。
言葉だけでは無理なのだ。
私は身をもってそれを体験している。
「夏油様なら祓えるわ!!」
“ドクンッ…”
予想など到底出来やしない名の登場に体が硬直する。
げ と う
その希少な姓を持つ人間が日本に何人いるのだろうか…
「…それが“凄く素敵な先生”の名前?」
「そうよ…苗字さんを助けたいの…
私が夏油様にお願いして“あげる”から一緒に来て」
“お願いしてあげる”という物言いが勘に触った。
彼女の言う“げとう様”が夏油君であるなら不愉快でしかない。
夏油君、貴方は何処で何をしているの?
自分の事を“夏油様”と呼ばせてるの?
げとう様は夏油君じゃないよね?
変な事してないよね?
そう考えたら急に恐ろしくなった。
夏油君そんな気持ち悪い事してないよね?
答えてよ夏油君…
指輪を嵌めた右手を左手でギリギリと軋むほど握りしめる。
脳裏に制服姿で微笑む夏油君が蘇り、心を蝕んでゆく。
逃げたいけど逃げられない。
思い出からも昔の夏油君からも…
「無理だよ…」
「やってみないと分からないでしょ?」
「お祓いをさせたいの?
それとも“げとう様”って人に会わせたいの?」
「どちらもよ
夏油様に会えば分かるわ
“あの方の素晴らしさ”が…」
「アンタ“げとう様”に騙されてるよ」
「え?」
「この指輪を祓うのは五条君なの…夏油君じゃない」
違う。
げとう様は夏油君じゃない。
絶対に違う。
“違う”って言ってよ夏油君…