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残穢

第4章 4(主人公視点)




五条君から指輪の封印に関する連絡はまだ無い。

その間に夏油君は非術師を殺しているのだろうか…



残穢4




大学の食堂で唐揚げ定食の唐揚げを頬張る。
カリカリとジューシーが口の中に広がり、唐揚げとフライドチキンの中間のような独特の味付けに白米が欲しくなる。
今日の昼食は一人。
午後の講義は皆バラバラなので毎回昼食もバラバラなのだ。

「貴女が苗字さん?」

「…」

目の前の空席にトレーが置かれ、見知らぬ女子生徒が腰かける。
自分の名前を一方的に知られているのは気味が悪い。

「その指輪どこで手に入れたの?」

「…」

「その指輪がどれだけの“力”を放っているか理解してる?」

「…」

「苗字さん“見える側”の人間でしょ?」

「は?」

「気付いてないのね
 今すぐその指輪を外してお祓いした方がいいわ
 優秀な人を紹介してあげる」



名乗りもせず初対面の人間に突拍子もない事を言い出す女子生徒。
指輪について触れた事は気持ち悪かったが、祓い屋の紹介はもっと気持ちが悪い。
新興宗教かマルチの勧誘だろう。


「…」


「若いけど優秀な方なの
 それに私達みたいな“見える側”の人間を大切にしてくれる
 しかも凄く素敵で…」

向かい側で独り言のように語る様子を無視して食事を続ける。
時間は有限なのだ。
男か女か知らないが“凄く素敵”ってのは能力に関係無いでしょ。

「お祓いは知り合いに頼んであるから大丈夫です」

「その人は信用出来るの?」

「はい」

「実力は?」

「私は“猿”なんで分かりません」

私を見える側と言っている時点で彼女のレベルが低いのは理解出来た。
それとも雑魚のフリをして罠にかけようとしているのか…
どちらにせよ関わらない方がいい。

「その指輪…とても危険よ」

「危険な目に合った事はありません」

「言い難いのは分かるわ
 私もそうだったから…
 一般人とは違うから隠してた」

きつねうどんに手を付ける事もなく一人語りが始まる。
ぬるくなり伸びたうどんが不憫でならない。
私はもうすぐ完食する。
この胡散臭い勧誘ともおさらばだ。
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