第1章 【assassinate.1】
(……殺すか。)
めんどくさいモノ、邪魔なモノ、不必要なモノは全部消してしまえばいい。
私はそれだけを教え込まれて生きてきた。
幸いにもここは人の気配の無い校舎裏。
今なら誰にも見つからない。
例え見られてしまったとしても、そいつも一緒に排除してしまえば問題ない。
制服の至る所に隠してある武器の一つを素早く取り出し、私は男の背後に素早く回り込んだ。
「えっ、早乙女さん…?」
私の動きを目で追えなかったのだろう男が戸惑いの声をあげて辺りを見渡す。
振り上げたナイフが太陽の光に反射して、一瞬キラリと光った。
「さようなら。」
小さく呟いた言葉は男の耳には届かない。
私は別れなど惜しんでいない。
これはただの手順であって、そこに私の感情はありはしない。
振り下ろしたナイフは正確に男の急所へ突き刺さり、小さなうめき声だけが辺りにこだました。
一瞬ぐっと緊張が走って硬くなった男の身体から徐々に力が抜け、ぼたぼたと真っ赤なまだ体温が残る血が地面に落ちていく。
何度も経験してきた文字通り死んでいく人間の身体の重さを感じても、私はもう何とも思わない。
ゆっくりナイフを引き抜いて、骸となった男の身体を血溜まりの中に落とす……はずだった。