第1章 【assassinate.1】
「…早乙女さんってさ、本当に俺の事好き?」
コイツもダメか。
と、心の中でため息をつく。
じっと私を見つめて返答を待っているのは、付き合って4日になる彼氏…いや、“彼氏だった”になるクラスメイト。
向坂 理人(むかいざか まさと)16歳
バスケ部所属 成績は中の上
家族構成は父・母・3歳下の妹が1人
好きな食べ物は豚汁 嫌いな食べ物は…
いやいや、とそこまで考えて頭を左右に振った。
強制的に脳の中で展開する情報をシャットダウンすると、その様子を見ていた向坂が口を開いた。
「それって好きじゃないって事?!」
そもそも好きなんて感情が分からない、とは言えずに黙っていると、痺れを切らした向坂が更に畳みかけてきた。
「じゃあ何で告白オーケーしてくれたのっ?!俺の事少しでもいいなって思ってくれたからじゃないの?俺のどこがダメだった?!」
…めんどくさいな。
率直な感想と共に今度は口からため息を吐く。
この学園での私の名前は
早乙女 澄香(さおとめ すみか)
私はこの清廉潔白みたいな名前が大嫌いだ。