第4章 バレンタイン
ホテルの部屋が何階だったのかは覚えていない。
でも、最上階だったような気がする。
エレベーターに乗りかなりのフロアを通過した感じがしたからだ。
部屋に入るととても広く全面真っ白で美しかった。
まるで、どこかの宮殿にでも迷い込んだかの様な感じがしたのだ。
キングサイズのベッドも白く、家具も白かった。
その白い部屋の中にある白いテーブルの上に一輪の薔薇の花が飾られていた。
それを見た時、私は心の底から驚き嬉しかったのだ。
多分、どの年齢の女性もそうだと思うが、花をプレゼントされると女性のテンションはかなり上がる。
私はその一輪の薔薇の花を見た時、本当に嬉しかったのだ。
その薔薇の花の隣にはワインボトルが1本とワイングラスが2脚置かれていた。
私は、ヤマザキにバレンタインのチョコを用意していた。
そのチョコを彼に手渡したのだ。
「美都、ありがとう…僕は嬉しいよ…」
「うん、私も嬉しいわ…お花ありがとう…」
私は、そう言うとヤマザキに抱き着いたのだ。
ヤマザキはそんな私を優しく抱きしめてくれた。
「今夜は、ここに泊っていかないか?」
そう、耳元で囁かれた。
でも、その時、夫の誠一の事が頭をよぎった。
自分は結婚していて人妻なのだとこの時気づいたのだ。
泊ることはできないと心の中で思っていた。