第4章 バレンタイン
それを見ていた女性店員が声を掛けてきたのだ。
「お客様、ピアスをお探しですか?」
「はい、シルバーのピアスが欲しいんですがお勧めはありますか?」
「はい、こちらのピアスは毎年デザインが1点物のピアスです。今年しかないデザインのピアスですが、如何でしょう?お客様にとてもお似合いだと思いますが…」
そう言って勧めてくれたピアスを見て、私は一目で気に入ってしまったのだ。
そのピアスはシルバーで出来ていて、釣りに使う時の針の様な形をしていた。
厳密には、針の様に湾曲していたが、その曲線は美しく、光を放って見せてくれていたのだ。
「美都、これが欲しいの?」
「ええ、これにするわ…」
そう言うとヤマザキはそのピアスを買ってくれた。
値段がいくらしたのかは私には分からなかった。
洋服もそうだが、ピアスも値段を知らずに私は買って貰ったのだ。
その後、ランチに行ったのだが、何を食べたのかは覚えていなかった。
買って貰ったばかりの洋服を着て、買って貰ったばかりのピアスをして食事に行ったのは覚えている。
ランチを済ませると、インターコンチネンタルホテルへと私たちは向かったのだ。
ヤマザキは私が美しくなることをとても喜んでいる様だった。
夫の誠一は、私が髪型や髪色を変えても気づかない人だった。
私が綺麗になろうが、汚くなろうが気にも留めない性格だった様に思う。
ホテルに着いて、部屋に入るとまたサプライズな出来事が待っていたのだ。