第23章 本音
「嫌なこと聞いてごめんね。……昨日の任務の後にされたってことで間違いない?」
先生の問いかけに俯き頷く。
毛布は強く握りすぎてぐしゃぐしゃだ。
「なんで抵抗しなかったんだ?」
準一級術師である彼女が補助監督なんかに後れを取るわけがない。
いくら男と女といえで、相手は特級術師の先生でもないのに。
「写真、取られて……動画も……。逃げたら、野薔薇と禪院真希に手を出すって……。そんなの嫌だから。初めてだったから。友達、できたの……。喧嘩したのも……。初めての友達なのに、酷い目に遭わせたくなかった……」
彼女の涙声に私は静かに涙を流した。
アンタだって怖いはずなのに、友達のためだからって他人を優先して。
アンタが私の事をちゃんと友達だって大切なんだって思ってくれたことが嬉しいと同時に、何もできなかった何も気づけなかった自分の無力さに腹が立つ。
「夏油だって駄目に決まっているだろう。どうして私達大人に頼らなかった。オマエの周りにいる大人はそんなに頼りないか」
「……そんなことない。そんなことないけど……」
言葉尻を濁らせ、は先生をちらりと見た。
その視線の意味は一体なに……?
「じゃあこれで最後な。昨日が初めてか?」
「違う……」
「9月の中旬頃……。私が修行で低級の任務をし始めた頃から……」
「は……?そんな前から?」
「車の中で寝ちゃって。貰ったオレンジの中に睡眠薬か何か入ってたんだと思う」
すぐに寝たから、とさっきまで怯えていたとは思えないほど淡々と状況を説明する。