第23章 本音
「夏油、これはオマエのプライバシーに関わる事だがオマエの口から聞かなきゃいけない。正直に答えてくれるね」
「……」
「合意か?」
「…………合意」
長い沈黙のあと、彼女はそう言った。
どこからどう見ても合意ではないだろうに。
どうして助けを求めながらそんな嘘をつくのか。
「そんなに怯えて震えてるのにか?本当にオマエがしたくてしてるのか?野薔薇も言っただろ。もう隠す必要ねえんだよ。相手は誰だ」
真希さんの切羽詰まったようなその顔と声。
こんな真希さん初めてみたかもしれない。
「……嫌だ」
断固として口を割らない。
私たちはその相手を知っているけど、自身が言わなきゃいけないこと。
「そこまでして相手を庇う理由はなに。脅されてたりするの?」
先生のその一言はどうやら図星のようだ。
勢いよく顔をあげたかと思うと私と真希さんを見て、唇を震わせて顔を背けて。
なんで私たちを見たの……?
「なるほど、私と野薔薇が餌として使われていたのか」
舌打ちと共に「糞やろう」と吐き捨てる真希さん。
だから私たちをみたのか。
もう流石に言い逃れも何もできないと観念したのか、彼女は漸く口を開いた。
「……ぎ……っ」
「ん?」
「……も、ぎ……だよ。相手は……」
「そっか。もう一度聞くけど合意?」
優しく聞き返す五条先生。
いつものとは思えないほど、顔を窺い視線を泳がせ躊躇いがちに口を動かす。
きっとそう言う風に教え込まれたのだと、この場にいる全員が理解した。
一拍置いた後、は先ほどまでの口の堅さをどこかに置いてきたのか今度は素直に答えてくれた。
「……違う。無理、やり……された」
彼女の言葉に怒りが抑えられない。
誰にも言えずに一人で抱えていたんだ。
私は思わずその身体を抱きしめた。