第23章 本音
「よかった、目を覚ましてくれて……」
先ほどよりも体温を取り戻した手を優しく握ると、力のない笑顔を向けて私の手を握り返してくれた。
たったそれだけのことなのに、すごく嬉しくて、漸く生きた心地がした。
「ここ……どこ……?」
「医務室よ。アンタ、倒れる前後の記憶ある?」
「……あー、うっすらとなら……。ごめんね、野薔薇」
「謝んなくていいから」
目線を泳がせながら、私にバツの悪そうな顔を向けたその時。
は大きく目を見開いた。
焦りを見せるその姿はまるで、会いたくない人に会ったかのような反応。
ああ、そうだった。
先生もこの場にいたんだった。
揺れる瞳の奥には五条先生が映っている。
「おはよう。体は大丈夫?」
「あ……まぁ……、それなりに……」
は握っていた私の手を放し、毛布を集める様に身体を隠す。
もうすでにみられているけど、彼女はそのことを知らないからそうしたんだと思う。
見られたくないわよね、好きな人なら尚更。
さっきまで私と話をしていたのに。
今は先生しか見えていない。
本当にバカな奴。
何でこんな奴を好きになったのよ。
事故物件もいいところよ。
外観だけよくても中身が伴ってないとそれはもう事故なの、わかる?
男を見る目がないんだから。