第23章 本音
「してないよ。最近はめっきり」
じゃあそれより以前はしていたってことね。
やることはやってんじゃないの。
あんまり聞きたくなかった事実だけど、アンタがなんで頑なに素直にならなかったのか、その理由が今わかった。
「今現在付き合っている恋人はいるか?」
「恋人?いないと思うけど。そんなこと聞いたこともないし。……いたら僕そいつの事殺してるかもしれないし」
最後の言葉はボソッと呟かれたけど、もれなく全員の耳には届いていた。
自覚しているのね、この人。
自覚していながら以外の女と寝たのか。
最低。
クソ重すぎる愛にぞっと鳥肌が立つと同時に、この男を軽蔑してしまう。
術師としては尊敬できるけど、人間としては尊敬できない所以はそこね。
「なに。どうしてそんな事聞くの硝……」
「分かりづらいけど、指の痕だ」
硝子さんの指さす場所、ウエストの際辺りや脹脛などには指の痕らしきものが複数ついていた。
指の痕だけじゃない。
手首には何かで縛られたような痕もあった。
「この鬱血痕は殴られた痕だろう。他の傷も……もう説明しなくても察しはつくだろ」
「両腕と足の怪我は任務で負ったもので合ってる?」
焦りと不安と怒りが入り交じったような表情の五条先生に私は「足はそう。両腕もたぶんそう」とだけ答えた。