第23章 本音
「あんた、それ……」
「見るな!!……お願いだから、見ないで……」
私の身体に散りばめられる痛々しい痣や傷を野薔薇に見られたことが、私をパニックへと陥れた。
背中を丸め両腕で体を抱きしめてその場にしゃがみこんだ。
そんな私の姿を見た野薔薇の息を呑む音が聞こえた気がした。
「硝子さんに……」
「やめて!!!!」
自分でも驚くほどの叫び声。
「なんでもない、なんでもないから……。任務で怪我しただけ……」
「そんなわけないでしょ!!だって、その身体の痣……」
「嘘じゃない!!嘘じゃないから!!本当、だから……」
言い訳したって無理だと言う事は分かっている。
分かっているけど、聞かれたくなかった、知られたくなかった。
「大丈、ぶ……だから」
「!!」
その言葉とは裏腹に。
任務の疲れ怪我、昨日の情事の精神的ダメージ、長時間冷水に当たっていたことが、ついに私の意識を奪った。
眼前に黒い幕が下りたように、目の前が真っ黒に染まった。
頭の隅で聞こえたのは野薔薇が私の名前を呼ぶ声だけ。
何か、何か言わなくちゃ。
安心させるために、何か。
口を動かして声を出すけど、音になったのかならなかったのかすらわからないまま、意識はゆっくりと遠のいていった。