第23章 本音
廃墟のマンションを出て茂木の車に乗り込んだ。
流石の茂木も私の腕を見て「深夜までやってる薬局が近くにあるから寄るか?」と聞いてきた。
私は黙って頷いて、今さら痛んできた腕に顔を歪ませた。
「ほら」
車内で待機していた私の目の前に茂木がビニール袋を渡してきた。
中には、消毒液にガーゼ、包帯などの応急手当の他にエナジードリンクや蒟蒻ゼリーなども入っていて、少し驚いた。
けど、絆されるな。
今からされることを考えたら、こんなの優しさでもなんでもない。
腕の手当てをしながら、今から向かう場所で行われる行為を思うと、死にたくなってくる。
憂鬱な気持ちを抱いたまま、私は包帯で巻かれた腕をさすった。
ラブホテルに着き、私は茂木の後ろを歩く。
何も考えずにひたすら金魚のフンのようにくっついて。
エレベーターに乗り込み、茂木は3階のボタンを押した。
ゆっくりと浮上していく狭い密室の中、茂木はずっと私の腰に手を添え、時折お尻を触った。
嫌悪感を抱きつつも私はされるがまま、抵抗はしなかった。
チン、とエレベーターが止まりドアが開く。
大きな歩幅で歩く茂木とは対照的に、私はゆっくりとゆっくりと。
314号室。
ここが私が今日抱かれる部屋。
処刑台に立たされた気分だ。
下を俯いたまま茂木が部屋の鍵を開けるのを待っていた。
いつもそうだから。
そうしたら私ももう逃げられない。
逃げられるわけもないけど。