第23章 本音
車の中はずっと静かだった。
茂木が今何を考えているのか分からなくて、それが怖くて私は伏黒から借りた呪具をずっといじることしかできない。
「着いたよ」
車が止まった場所は廃墟となったマンション。
3~4級の大量の呪霊が凄んでいるという。
本当は試したかった術式があったけど、今は呪力がないからできない。
呪具一つで戦うしかないんだけど、もう一個借りてくりゃよかった。
だけど3~4級。
時間はかからないけど、少しでもあいつと一緒にいる時間を短くしたいという思いと、八十八橋で消耗した体力では、長期戦は不利という思いが交差する。
頭の中でどっちを選んだ方が自分の負担にならないかを考えながら、私は呪霊達を祓っていく。
「……長期戦は無理だ」
祓い始めて数分。
私の中の結論が出た。
足の痛みが尋常じゃない。
捻挫した足を庇って戦っていたせいで逆の足にも影響が出てしまった。
借りた長刀を振り回し、漸くすべての呪霊を祓う事が出来た。
そう思った。
背後に隠れていたもう一匹の呪霊に気が付かなかった。
気付いた時にはもう遅い。
呪霊の攻撃を思い切り喰らってしまった。
咄嗟に腕で顔を覆うが、両腕は血だらけだ。
長刀は折れていない。
よかった。
これぶっ壊したら伏黒に殺される。
掌をグーパーと何度か握る。
骨に異常ないが少し痺れている。
力が入らない訳ではないから長刀は握れるだろう。
腕……血だらけだけど肉はみえていないな。
皮膚が少し焼けたくらいか。
うん、意外と平気だ。
私は目の前の3級を睨み、長刀を手にして呪霊のどたまに振り下ろした。
任務終了。
重たい身体にむち打ち、廃墟を後にした。