第23章 本音
――夏油side――
八十八橋の任務を終え、私達は高専へと戻る。
戻る車内では新田明によるお説教タイムが始まった。
報連相を知らないのかとか、勝手に判断をするなとか。
そのどれもは正論だから、誰も何も言えずに黙って大人しく聞くしかない。
足の捻挫は、新田明が応急処置でコンビニで氷を買いタオルで包んだ物を渡してくれた。
あとでちゃんと家入硝子の所に行き手当てをしなくては。
今日一日でいろいろなことが起きすぎた。
だからすっかり頭からすっぽりと忘れていた。
茂木のことを。
「着いたっス」
新田明に起こされ、ゆっくりと目を開ける。
時刻は既に10時を過ぎている。
このままお風呂に入って……いや、違う。
まず先に家入硝子のところだ。
ぼんやりとする頭の中で考えていたら、名前を呼ばれた。
声のした方を向くと、そこには茂木がいて。
ニコニコと笑うその顔を見て一気に私の血が冷たくなった。
「あれ、茂木さんじゃないっスか。どうしたんスか」
「実は夏油さんには別件で任務がありまして。迎えに来ました。夏油さんをお借りしても?」
「え……それはちょっと……。彼らはたった今任務を終えたところっス。それに夏油さんは足を怪我してて……」
冷たい瞳が新田明を映す。
その圧に彼女は押されているし、何よりここで変な騒ぎを起こしたくない。
「行ってくるわ」
「夏油さん⁉」
「おい、夏油。それはいくら何でも無理だろ。呪力が……」
呪力がほぼ空なのは確かだ。
だけど、「行かない」という選択はできない。
「伏黒、悪いけどさ。呪具、貸してくんね?」
「…………」
何か言いたげな顔だったけど、何も言わずに呪具を貸してくれた。
「悪いね。これは私の修行だからさ、休めねえんだよ」
虎杖と野薔薇にも言い聞かせるように。
私は、茂木と一緒に"任務"へと向かった。