第22章 黒閃
――夏油side――
結界が消えた。
きっと特級を祓ったからだろう。
静かな川の流れる音、9月の柔らかい風が木々を揺らす音。
自分の意識が何処までも澄んで研ぎ澄まされているのが分かる。
それはきっと、黒閃を打ったからだろう。
呪力なんてほぼないのに、あの時確かに感じた、呪力の核心。
変な感じ……。
ぼうっと夜空を見上げる。
身体はボロボロで貧血状態もいいところなのに、すごく気分がいい。
無意識のうちに口元を歪ませていたら、私の耳にか細い声が聞こえた。
後ろを振り向くと、伏黒は膝をついていて、そしたらゲロって、そのまま地面に倒れた。
まぁ、領域を展開したんだ。
そうなるわな。
フラフラとよろめきながら、伏黒の所へ行くと何やらぶつぶつ呟いている。
独り言か……?
悪人が嫌いだとか、善人が苦手だとか。
なんかよくわかんないことをずっと言っている。
焦点の合わない目はただ真っ黒い空を映しているだけ。
「何が、呪術師だ……。……馬鹿馬鹿しい」
「伏黒……?どうした?」
私の声に反応せず、ただ虚ろな瞳で「悪かった」と謝る。
弱弱しく今にも壊れてしまいそうだ。