第22章 黒閃
むすっとした表情で五条先生を見れば、五条先生はいつもの飄々とした雰囲気ではなく、至極真面目に語り掛け俺の前にしゃがみ込んだ。
先生曰く。
虎杖や先生なら常にホームランを狙う。
夏油は狙う狙わないで悩みながらも、最終的には狙ってみる。
そして俺は狙う狙わないの選択肢がないまま。
意識の問題はそこだと言う。
「バントが悪いって言ってんじゃないよ。野球は団体球技。それぞれに役割があるからね。でも呪術師はあくまで個人競技」
「他の術師との連携は大事でしょ」
「まぁね。でも周りに味方が何人いよと、死ぬときは独りだよ」
サングラスの奥の青い瞳が、俺の瞳を射抜いた。
鋭い眼光に若干ビビってしまった。
「君は自他を過小評価した材料でしか組み立てができない。少しの未来の強くなった自分を想像できない。君の"奥の手"のせいかな。最悪、自分が死ねば全て解決できると思ってる。それじゃ僕どころか七海にもにもなれないよ」
何も言えなかった。
五条先生の言う通りだったから。
「死んで勝つと死んで"も"勝つは全然違うよ、恵」
軽く額をデコピンされた。
その痛みが、じわりと全身に伝わる。
「本気でやれ。もっと欲張れ」
頭の中で五条先生の言葉が響き、煙のように五条先生は姿を消してしまった。
ゆっくりと目を開けて、意識が浮上する。
ああ、そうか。
俺は気を失いながら、先日の稽古の夢を見ていたのか。
タイミングがいいんだか悪いんだか分からない。
それより、俺は何秒気を失っていた?
玉犬は破壊……術式が解けただけか。