第22章 黒閃
そして、まるで弓矢を飛ばず様にそいつは呪力を飛ばしてきた。
呪具を盾にし躱す伏黒だったが、額を掠めてしまった。
真っ二つに折れる呪具と額から流れる血が、地面に落ちる。
少年院にいた奴よりも強く速い。
「"封鎖"」
特級の右の二の腕に鍵を投げ呪力を篭めれば、一瞬特級の腕が止まった。
その隙に伏黒が鵺を出そうと手で影を作る。
が、動きを止めていたはずの特級は無理やり私の術式から抜け出し伏黒の顔面を殴りつけた。
壁まで吹き飛んだ伏黒は思い切り頭を強打しそのまま意識を手放す。
術式の解けた玉犬はドロリと伏黒の影の中へと消えた。
「まじか……」
せめて2秒だけでもいいから動きを止めたかったのに。
1秒も足止めできないのかよ……。
あの時、幸福の時はもっとうまくできたはずなのに……。
ケタケタと笑う特級。
私は軽く舌打ちをしながら、特級を囲むように足元に鍵を投げ込む。
今度は呪力を増幅させ、逃げる隙など与えずに「封鎖」で閉じ込めた。
「見えない壁、って言えばわかるか。私が術式を解かねえ限り、オマエはその場を動けねえよ」
慣れない術式に消費量の多い呪力。
頭が痛いし、手足が震えている。
だが、ここで術式を解くわけにはいかない。
私は更に呪力量と呪圧を鍵に流し込む。
そうすれば、透明な壁は分厚くなり中の空気は薄れていく。
呪霊と言えど、空気がない状態が続けば弱まるだろう。
だから私は惜しみなく呪力を流し込んだ。
閉じ込められている特級は見えない壁に向かって攻撃をするが、そう簡単に壊されてたまるかよ。
こっちは胸糞悪いセックスと引き換えに修行してんだからよ‼
鼻や口から血が零れた。
私の限界も近いってことか。
いいじゃん、勝負しようじゃないか。
どっちが最後まで立っていられるか、耐久だ。
言っとくが、私は諦めの悪い女だぞ。
口の端から垂れる血をそのままに、私はにやりと笑った。