第22章 黒閃
「津美紀は寝たきりだ。この八十八橋の呪いは被呪者の前だけに現れる。本人が申告できない以上、いつ呪い殺されるか分からない。だから、今すぐ祓いたい」
そんなことを思っていたのか。
姉ちゃんが寝たきりで、しかも呪われていて。
今までどれくらいの不安がこいつの中にあったのだろう。
怖い思いをしていたのだろう。
想像しただけでもぞっとする。
「でも危険度が上がったのは本……」
「はいはい。もう分かったわよ」
「はじめっからそう言えよ」
危険なのは事実なのに。
まるで「それがどうした」と言わんばかりの二人。
自分たちが危険な目に遭うことよりも、友人を助けることが当たり前だと、そう言い放つように。
調子が良くて悪ノリするときもあるけど、私や伏黒が考えすぎて躊躇してしまう場面で、こいつらはなんなくそれを飛び越えていく。
私や伏黒ができないことを、馬鹿になれずにいるところを二人は手を引っ張ってくれる。
その馬鹿さ加減に私はずっと憧れていた。
この二人のように馬鹿になりたいと。
今もまた、彼らは私達二人の手を握って引っ張ってくれている。
その馬鹿さに私たちは救われている。
「何よ、。人の顔じろじろ見て」
「いや……。馬鹿だなって思って」
「はぁ⁉」
「おい、喧嘩すんなよ二人とも」
「私はしてないわよ‼がいきなり喧嘩ふっかけてきたのよ‼」
言葉が足りなかった。
そう言う意味の馬鹿ってことじゃないのに。
ぷんすかと怒りながら野薔薇は先頭を切る。
それに着いて歩きながら、峡谷の下を流れている川を探した。