第22章 黒閃
コンビニに残された私たちは、何も言わずに歩き出した。
「伏黒、武田さんに挨拶しに行くのになんでこっち?反対方面だろ」
「近道があんだよ。それより、お前の任務先はどこだよ」
「この道をまっすぐ行って、デカイ道路に出たら左に曲がって……」
「おい、それって……」
「わぁ。びっくり。次の任務先、八十八橋だって。私、八十八橋の任務に引き継がれた術師みたい」
「…………わざとらしい」
舌打ちをする伏黒に私はにんまりと笑った。
どうせ、お前の事だ。
虎杖や野薔薇を危険な目に遭わせたくなかったんだろ。
いくら私がいるとはいえ、虎杖は術師になりたてで野薔薇は3級術師。
私達3人でどうこうできるものじゃない。
そんな中で、私達を置いて姉ちゃんの所に行くことは伏黒にはできない。
こいつの中で天秤にかけた時、姉ちゃんも虎杖も野薔薇も私も、どちらもみんな平等に命の重さが重いから。
そして。
夜が来た。
私と伏黒は八十八橋の下へと続く道を見つけ、峡谷を降りる。
夜の八十八橋はとても静かだ。
二人の足音しか聞こえない。
昼、伏黒に手順は教えた。
その方法で私たちは今から呪霊の結界内へと入る。
「術式を付与した領域を延々と展開し続けるのは不可能だ」
「となると、この結界は少年院の時のような未完成の領域ってことになるな。今回は逆に助かった」
「"帳"の必要がない」
伏黒の言葉に頷きながら、私隊は歩き続ける。
その時、後ろから誰かが来る気配がした。
振り向こうとした瞬間。
「自分の話しをしなさ過ぎ」
「だな」
声だけでその人物が誰だかわかってしまった。
野薔薇と虎杖だ。
こんな近くまで来ているのに、私も伏黒も今の今まで気づかなかった。