第22章 黒閃
掌を力強く握りしめれば、伸びた爪のせいで血が流れ地面にシミを作る。
大きく息を吸って吐く。
自分のことは後回しだ。
今は、この任務が最優先なんだから。
私は重たくなった足をなんとか動かして、あのコンビニまで戻った。
私を待っていた彼らはこっちに気づくと大きく手を振った。
それに手を振り返しながら私はまっすぐに伏黒の所に行き、彼の顔を覗くようにして見る。
先ほどよりは落ち着いているように見える。
「大丈夫か?」
「平気だ。それより、任務の危険度が上がった」
「だろうな」
伏黒に話を聞くと、この任務は他の術師に引き継がれることになったと言った。
「だから、オマエらは帰れ」
「オマエらって、伏黒は?」
「俺は武田さんに挨拶して帰る。ほら、行け!!」
そう言って彼は虎杖たちを無理矢理車の中に乗せた。
「夏油も早く乗れ」
後ろの方で突っ立っている私に声をかける伏黒だったが、私は一歩も動かなかった。
「私、次の任務が入ったから乗れない」
「はぁ?んなわけ……」
「ここから歩いて行ける距離なんだよね。散歩がてら歩いて目的地まで行くわ」
「ちょっと!!」
「気を付けて帰れよ」
私は新田明に車を出すように言い、彼らを見送る。
ゆっくりと走り出す車は徐々にスピードを上げ、そして見えなくなった。