第22章 黒閃
重要な部分を聞き出せたところで、私は話題を切り替えた。
「ところでさ。中学の伏黒ってどんな感じだったん?」
「いやぁ、めちゃくちゃおっかなかったっス」
と、藤沼リーゼントは当時の事を語ってくれた。
とりあえず不良がいたら殴り倒していたらしい。
殴った相手を山のように積み上げてその上に座ったり、垂れ下がっている横断幕に不良どもを吊るし上げたり、とりあえず何かと不良がいれば喧嘩して殴って殴って殴りまくっていたらしい。
藤沼リーゼントもボコられたと言っていたけど。
「オマエは何してボコられたんだよ」
「えっとぉ……」
言いづらそうに口をもごもごさせたかと思うと、藤沼姉をちらちらと見ている。
姉には言えないことをしたのか、コイツ。
「タバコ吸ったりカツアゲでもしたりしてたんか?」
「え"っ……。あ、いや……あの……」
図星かい。
狼狽えすぎだろ。
つうか、ボコられたくせにタバコやめてねえのか。
「自分をでかく見せるためだけに煙草吸ってんならやめろ。自分が惨めになるだけだぞ」
「……は、はい」
しょぼんとした顔で下を向く藤沼リーゼント。
自分でもわかってるんだろうな。
コイツはそこまでの悪人じゃない。
それは姉弟の仲の良さでわかる。
「えっと、伏黒君は高校ではどんな感じなんですか……?」
今度は私が質問された。
どんな感じと言われてもあんな感じなんだよな。
「あんまり自分のことは話さないなぁ。姉がいるってのもさっき知ったばっかだし。でもいい奴だよ。ネガティブで自己評価ばかみてえに低いけど」
「ふふっ」
「なに?」
「いや、伏黒君はいい友達に恵まれたんだなって思って」
くすくすと笑う藤沼姉。
友達、と言う単語がやけに大きく私の中に響いたのは、他の人から見たらそう言う関係に見えるんだと思って、くすぐったく感じたからかもしれない。