第22章 黒閃
どうやら、藤沼リーゼントが昨日の事を藤沼姉に話したらしい。
そしたら思うところがあって今に至る、というわけだ。
視線を彷徨わせながら藤沼姉は話をし始めた。
昨日葬式をしていた森下家はどうやらご近所さんらしく、森下と八十八橋について調べている私達の事を藤沼リーゼントから聞いた藤沼姉は、何か関係があるのかなと思ったらしい。
関係があるかどうかはまた調べる必要があるが、それよりもなんで藤沼姉がそのことを気にするのかが気になる。
近所だからってだけでそこまで気にするようなことでもないだろ。
野次馬的な何かでそう言う意味で気になるのか。
新田明を見ると、彼女は口元に指を当てて声を出さずに「静かに」というジェスチャーをしていた。
呪いについて非術師に話すつもりは元々なかったけど。
「関係って?」
「だから、森下さんが亡くなったことと橋が……」
「関係ない。俺達はただ」
「私、行ってるの。中2の時、夜の八十八橋に」
伏黒の言葉を遮る藤沼姉。
その表情は恐怖に怯えていた。
揺れる瞳は地面を見つめ、彼女の手は震えていた。
「最近何かお家で変な事ないっスか?家族の中で自分だけが感じる違和感とか」
新田明がすかさず詳しい事情を聞き始める。
すると藤沼姉は心当たりがあるのか、震える声でその内容を教えてくれた。
「私の家、地方のアンテナショップやってるんですけど、私が帰る時だけお店の自動ドアが開きっぱなしなんです。お父さんもお母さんもたまたまだって言うんですけど……」
確定だ。
確実に今回の呪いはあの八十八橋が関係している。