第22章 黒閃
「夏油さんは甘えるのがクソ下手くそっスね」
「……そう、ですか?」
「はい。なんなら人に頼るのも下手くそっス」
「………」
「昔のこともあるのかもしれないっスけど、今は今っスよ。夏油さんが大事にしたいって思う人がいる様に、夏油さんを大事にしたいって思っている人たちもたくさんいるっス」
「いる、んですかね……」
「いるに決まってるじゃないっスか。釘崎さんとか特にっスよ。……もう少し、人を……友人を信用してもバチは当たらないと思うっスよ」
私と野薔薇が喧嘩をしているのを彼女は知っている。
仲直りさせるための助言なのかもしれない。
それでも私はまだうまくそれを受け止める事ができなかった。
あんな喧嘩をしておいて、大事にしてもらえてるとは思えなかった。
酷いことを言ってしまった。
言葉で傷つくことを知っているのに。
私は私を侮辱してくる奴らと同じことを野薔薇にしてしまったのだ。
果たしてそれで私と野薔薇は友人だと言えるのだろうか。
信用できる関係性なのだろうか。
それがわからなくてあやふやで、ぐちゃぐちゃな感情が渦巻いているのだ。
「っ!!」
ぼうっと考え事している私の頬に冷たい何かが当たった。
驚いて新田明を見ると、彼女はニコニコと笑っていて。
「カフェオレでよかったっスか?」
「あ、はい……」
受け取ったカフェオレは冷たくて、私のぐしゃぐしゃな脳内を一気に冷やしてくれた。