第22章 黒閃
落ちていく虎杖を見守りながら私はそう叫んだ。
ターミネーター2でT-800が溶鉱炉に落ちる際に言ったセリフだと勘違いする人が多いが、溶鉱炉のシーンではT-800はセリフを発していない。
このセリフを発したのは別の場面だ。
虎杖が飛び降りて下まで行って数分。
ビニール紐を3人で力を合わせて引き上げる。
虎杖は頭に血が上っているのか、ぐったりとした表情をしていた。
伏黒が持っていたペットボトルを虎杖に渡すと勢いよく飲み始める。
「ぷはーっ!!生き返った!!」
「んで、どうだった?」
「なんもいねえ。バンジーだから飛び降りればいいと思ったんだけどな……」
「とりあえず、橋の上で待つか」
飛び降りる行為が鍵ではないとするなら、一体何が鍵だと言うのか。
とりあえず自然に呪霊が出てきてくれればいいんだけど。
そしてかれこれ待つこと数時間。
青かった空は赤く染まり、次に暗い闇の中に包まれ、徐々に明るくなっていた。
つまり私たちはこの橋の上で一夜を明かしたのだ。
徹夜した目の下は濃い隈が出来上がっていた。
大きな欠伸をする虎杖の横で、野薔薇が不機嫌そうに呟く。
「ちょっと。呪霊の呪の字も出ないじゃない」
そう。
徹夜したにもかかわらず、呪霊は一匹たりとも出ることはなかった。
暫くすれば私たちの様子を見に来た新田明が私達の顔を見て「仮眠するッス」と私たちを連れて車内に戻る。
座席に座った途端重くなる瞼。
逆らうことはせずに、私達はすぐに寝た。