第22章 黒閃
その後、私たちは車に乗り込み八十八橋へと向かった。
八十八橋―――正式名称、鯉ノ口峡谷八十八橋。
自殺防止のためか、橋には何メートルもの高さもある鉄格子と有刺鉄線が張ってあった。
「呪霊が確認でき次第"帳"を下ろすっス」
新田明の言葉に頷く。
少し離れた場所で、新田明は待機し私達は橋の上で待機。
果たして呪霊は現れるのだろうか。
と思った時、私の隣で何かごそごそとやっている3人の姿に気が付いた。
横を向くと、野薔薇と伏黒がビニール紐で虎杖をぐるぐる巻きにしているところだった。
「……何してんだ?」
「何って。見りゃわかんでしょうが。バンジーよ。度胸試しよ」
「この中で丈夫なのは俺だろ?」
「おい、動くな虎杖。巻きづれぇ」
「……そのビニール紐はどこから?」
「武田さんが持ってたから借りた」
「……そう」
「てか、アンタも手伝いなさいよ」
「………後ろから押す係するわ」
ビニール紐でぐるぐる巻きにされた虎杖を連れて橋を渡る。
鉄格子と有刺鉄線を乗り越えてバンジーをするのは楽ではない。
どこかに飛び下りれる場所があるはずだ。
「あ、あった」
指さした場所の鉄格子は不自然なほどに壊れていた。
誰かが壊してここから飛び降りたのか、それとも度胸試しをするために壊したのか。
何が真実かは知らないが、今回ばかりは助かった。
ビニール紐が切れないように何重にも鉄格子に巻き付ける。
まぁ、最悪切れたとしても虎杖だから大丈夫か。
鉄格子の向こう側に立つ虎杖は、その高さに若干驚いてはいたが、大きく息を吸ってこちらを振り向き親指を立てた。
「I'll be back.」
「早く行け」
私は思い切り虎杖の背中を蹴り飛ばした。
「ぬわ~~~っ!!」
「虎杖~。ちなみにだけどそのセリフ、ラストシーンでは言わねえぞ~!!」