第22章 黒閃
正規の武田さんに亡くなった4人の事を聞くと、彼は4人のことを覚えていた。
4人がこの中学を卒業したのは20年近く経つというのに。
意外と人は思い出を簡単に忘れることはないんだな。
「昨日のことのように覚えているよ。伏黒君程ではないが、問題児だったからね。何が聞きたい?」
「変な噂、黒い噂、悪い大人との付き合い……。あとバチ当たりな話とかあれば」
伏黒、オマエ結構な問題児だったのか。
淡々と武田さんに聞き込みしているけど、私たちはオマエの問題行動の方が気になるぞ。
虎杖と野薔薇は案の定伏黒をからかっている。
伏黒に殴られた虎杖と巻き添えをくらう野薔薇。
私は漫才のコントでも見ているのだろうか。
それくらいこいつらのやり取りテンポ良すぎ。
「なんでもいいです。気になる事とか心当たりがあったら教えてください」
しゃがみ込んでぶつけたところを抑えて悶えている二人は放っといて、私は武田さんに向き直る。
「うーん……。そうだなぁ。黒い噂……。問題児とはいえ並みの中学生の域は出んよ」
やっぱり、何も手がかりは掴めないか。
内心諦めかけたその時。
ガキ共が話に割って入ってきた。
「アレじゃないですか?八十八橋のバンジー」
リーゼント頭の中坊の言葉に私たちは耳を傾ける。
「八十八橋って?」
「自殺の名所。この辺で有名な心霊スポットだ」
自殺……、心霊スポット……。
嫌でも頭に浮かぶのはあの廃教会のこと。
思い出しただけで全身に鳥肌が立った。
首を勢いよく振ってなんとか邪念を取り払う。