第21章 諦念
「食ったな。じゃあ本題に入るか」
頬杖をついていた禪院真希が話題を振る。
「本題も何も、私は何もないよ」
「んなわけないでしょ。あんなずぶ濡れになって帰って来て」
「外に出てただけだって。騒ぎすぎ」
「野薔薇が騒ぐの仕方ねえと思うぞ。ぶっちゃけ、お前マジで酷い顔してるから」
だから、そんな酷い顔してないって。
勘違いだってば。
「あんたさ。着替えたときちゃんと鏡見た?自分の顔、しっかり確認した?私達がこんだけ言ってんのにわかんない?」
向かいの席に座っていた野薔薇が身を乗り出し私に顔を近づける。
その顔は今にも泣きそうで、なんで野薔薇がそんな顔をするんだろう。
「悟に振られたか?」
ぎくり、と漫画のような効果音が私の耳に聞こえた。
私に聞こえたんだからあいつらにも聞こえてるはず。
案の定、4人は「あ~……そういう」という顔をしている。
「嘘が圧倒的に下手くそだな」
「わかりやすい」
「明太子」
「全部話してもらうしかないわね。一から百まで」
あ~。
なんで私はごまかすスキルを持ち合わせていないんだ。
私はもごもごと口を動かすけど、やっぱりどう言えばいいのかわからないし、そもそもいう必要あるか?