第21章 諦念
洗面所を出ると、野薔薇はまた私の腕を取って部屋を出た。
向かった場所は食堂だった。
そこには禪院真希と狗巻棘とパンダがいて。
あの時の面子だと気づくのに時間はいらない。
「うっわ。ひっでえ顔」
「こりゃなんかあったな」
第一声、禪院真希がそう言ってパンダもの言葉に続いた。
一体私はどんな顔をしていると言うのだろうか。
「ツナマヨ」
狗巻棘が隣の椅子を引いて、ジェスチャーで座るように言ってきた。
テーブルの上には湯気立つおじやが置いてあった。
「とりあえず座って飯を食え」
「いらない。腹減ってない」
「減ってなくても食うんだよ。真希から連絡貰った棘が作ったやつなんだぞ」
「しゃけっ」
なんで作ってないパンダが偉そうに胸を張ってるんだ。
狗巻棘は得意気にピースしているけど、もっと主張しろオマエは。
私は軽く息を吐いて椅子に座った。
たまごと小ネギの入ったおじやからは鶏がらスープの匂いが漂ってきた。
そのせいか盛大に空気も読まず私の腹の虫は鳴いて、それを聞いた4人はニヤニヤと笑っている。
お腹はなったけど、気分的に食べる気分じゃない。
でもせっかく作ってくれたのなら食べなきゃ。
れんげを手にして一口だけ食べた。
身体に染みわたる優しい味に、一口、また一口と食べる手が止まらない。
冷えた身体と心が、生き返っていく。
気づいたらおじやはもうなかった。