第21章 諦念
――夏油side――
ずぶ濡れの状態で高専に戻ったらばったりと野薔薇と会った。
野薔薇は私の姿を見てぎょっとして手を取ってずんずんと歩き出す。
野薔薇の部屋に入れられバスタオルで頭をガシガシと拭かれた。
その間何か言っていたけど、何を言っていたのか全然記憶にない。
心ここにあらずの私に野薔薇は何を思ったのか誰かに電話をしていて、私に着替えを渡すと「着替えろ」と言ってきた。
「なんで?」
「風邪引くからに決まってんでしょうが。なに、なにがあったの?まあいいわ、それは後で聞くから。いいから着替えて」
「いい。部屋に戻る。ありがと」
「よくない。あいつらのところに行く前に着替えて。じゃないと私が無理やり服脱がせて着替えさせるわよ」
「っ!!わ、かった……」
今の私の身体を見られるわけにはいかない。
野薔薇の指示に従って私は洗面所へと行き、野薔薇から渡された服に着替えた。
渡してくれたのが長袖で良かった。
じゃなかったら、私の手首に残っている縄の痕ががっつり見られてしまう。