第21章 諦念
「タイミング悪くて悪かったよ。お楽しみ中邪魔したな」
酷く冷たい声。
はっと、彼女の顔をみれば、眉を八の字にし今にも泣きそうな、だけどそれを必死に抑えひた隠そうと、平常を保とうと言った、そんな表情をしていた。
ああ。
僕はまた間違えたのか。
「もう、ここには来ないから」
そう言って彼女は部屋を出て行った。
「!!」
今にも崩れ落ちそうな小さな背中を追いかけようとソファから降りれば、僕の腕を掴むデリヘル嬢。
「ちょっと、どこに行くの」
「放せ」
「続きしようよ」
「今すぐ放せ。殺すぞ」
先ほどまでの甘い雰囲気はどこにもない。
僕の鋭い眼光に怖気づいた女は、僕の腕を離しリビングから出ていく。
去り際「死ね」と言われたが、こんな最悪な状況になるくらいなら、に軽蔑され嫌われるくらいなら死んだ方がマシだ。
自業自得。
その言葉が僕の頭を支配し、追いかける術を失った。