第21章 諦念
――五条悟side――
高専でを見かけるたび、彼女の右耳に付いているピアスが目に入る。
日に当たるとまるで海のように輝くそれに、僕はにんまりと笑う。
牽制もいいところか。
まさか僕が一人の女性に夢中になるなんて。
昔の僕も想像していなかったよ。
日に日に大きくなる彼女への思い。
できれば今すぐにを僕のものにしたい。
だけど、彼女がそれを望んでいるとは思えない。
昔の僕なら心なんてどうでもよくて体さえ重ねることができればいいと思っていた。
し、正直最初は馨にもそういう思いを抱いていた。
だから何度かセックスしたんだけど。
でも今はどうよ。
セックスしたいのにセックスできていない。
身体だけの関係を僕は拒んでいるんだ。
彼女の心も欲しい。
そんな独占欲が僕の中に渦巻き、彼女に手を出せずにいる。
が僕のことをどう思っているのか、なんとなく分かる。
だけど確信がない。
僕を見るその目が愛なのか尊敬なのか、まだはっきりしない。
はっきりしないうちは、僕は彼女を抱くことはない。
だから、溜まるもんは溜まっていった。
を滅茶苦茶に抱き潰す妄想をしながら抜いたこともあったけど、気持ちいいのは最初だけ。
暫くすれば萎えてしまうのがほとんど。
を見てはムラムラして、疲れすぎてムラムラして。
何日も抜いていない日が続けば、さすがの僕も我慢の限界とやらが来る。
気付いたら、デリヘルに電話を掛けていた。