第3章 受胎
――夏油side――
「なにしてんの?」
「見てわかんだろ。受験勉強だよ」
この日。
私は机に向って勉強をしていた。
五条悟との勝負は一旦お預けだ。
朝から夜まで、勉強漬けの毎日。
それもこれも受験生だって忘れていた私が悪いのだが、色々ありすぎてそれどころじゃなかったのも確かだ。
「なんで受験勉強?」
「高校の入試が近いんだよ。つか、出てけよ。なんでいんだよ」
今、私の部屋にはなぜか五条悟がいる。
私のベッドに座ってせんべいを食ってる。
殺したい気持ちは山々だが、今こいつの相手をするわけにはいかない。
「高専に入試なんてないよ。面接はあるけど」
「はぁ?なんで高専?食べかす落としたら殺すぞ」
「え、だって高専生じゃん」
「……何言ってんだ、お前」
どうにも会話が成り立っていないように感じる。
椅子をくるりと回し、五条悟と向き合う形になる。
ぼりぼり音を立ててせんべいを食うこいつの姿の腹立たしいこと。
「私は白百合に行くんだよ。受験票だってあるし」
「なんでここにいるのか考えなよ。高専に通わせるために決まってんでしょ」
「それマジで言ってんの?」
「まじまじ大マジ。それに君を監視しなきゃなのに、わざわざ違う高校に通わせるわけないじゃん。バカなの?」
「馬鹿じゃねえわ」
私は持っていたシャーペンを机に投げた。
アホらしい。
何を一生懸命に勉強していたかわけわかんなくなった。
高専に通うことは決定事項だろうな。
白百合の受験票をびりびりに破いてゴミ箱に捨てる。
さよなら、私の高校生生活。
さよなら、私の憧れの制服。