第21章 諦念
私のナカに全てを注ぎ終えた男は、ゆっくりとナカから自身を引き抜く。
どろり、と溢れる男の欲望に。
私はもう何も感じなくなっていた。
手足を動かすのも、息をするのですら億劫だ。
ベッドに沈んだままの身体を動かすことはせず、ただ投げ出された右手をじっと見つめた。
動けない私を男は静かに抱き起こす。
近づく男の唇が私の唇と重なって。
入り込む舌が変な生き物のように動き回って、吐き気がする。
「じゃあ、帰ろうか」
にこりと笑う男は、いつものあの優しい笑みへと変わっていた。
頭の中はぐちゃぐちゃだった。
何も考えたくないのに、いろんなことが入り込んで脳の休息を与えてはくれない。
叫んで喚いて暴れて死にたい。
そう、思うほどに。
「このこと、誰にも言うんじゃねえぞ。言ったらわかってるな」
「……いちいち確認すんな。鬱陶しい」
「だったらいい。じゃあ、また明日な」
高専に着いて車を降りる。
その時、茂木の奴がそう言うもんだから、私はそう返した。
何度も確認して自分の不安を拭いたいのか。
だったら初めからこんな事すんな。
気持ち悪い男だ、どこまでも。
そんな奴に良いようにされている私も気持ち悪い。