第21章 諦念
触れられている耳はもちろん、頬も目も何もかもが全部熱くなる。
もうやだ。
心臓が死ぬ。
心臓麻痺で死ぬ。
誰かデスノートに私の名前書いた?
「開けるね」
五条悟の手に握られたピアッサーが私の耳に宛がわれる。
この緊張はどっちの緊張ですか、神様。
穴を開けられる恐怖から来る緊張なのか、それとも男に触られていることに対しての緊張なのか。
穴が空く衝撃に耐えようと私は目をぎゅっと瞑った。
「終わったよ」
「……へ?」
「痛かった?」
「いや、全然……」
ピアスホールにそれ専用の消毒ジェルを塗る五条悟は満足そうに笑って、先ほど私の手から取ったピアスを手にするとゆっくりと穴へと入れた。
「できた」
「……」
ずっと耳に触れていた男の指が離れていき、それに寂しさを覚えた。
ああ、私は本当にこの男のことが―――。
その事実に、涙が溢れそうになる。
叶うはずもない気持ちを抱き続けるのには慣れてると思っていたのに。
だけど、五条悟が私のためにこのピアスを買ってきてくれたことは事実だし、何より特注だと言うのだから、その瞬間だけこいつの脳内は私で埋め尽くされていたんだと思うと、嬉しい。
虎杖の言っていた意味がわかった。
確かに、嬉しいもんだ。
そこに望んだ結果がなかったとしても。
「ありがとう。大切にする」
嬉しくて、普段は絶対に見せない笑顔をしてしまった。
無邪気で子供がするようなそんな顔。
驚いた様な表情をする五条悟。
何か言いたそうに口を開いたけど、静かに閉じて。
言いたいことがあれば言えばいいのに。