第20章 幸福
傑とよく似た瞳が少しだけ揺れる。
今にも押し倒してその身体に触れたいと思う。
けど、彼女を傷つけたくない、大切にしたい。
以前の僕にはなかった感情に、僕自身が振り回されている。
滑稽な話だ。
「そろそろ部屋に戻りな」
これ以上話すことはないし、思ったよりベラベラと話してしまったことに少しばかり動揺してしまい、逃げる様に浴室へと来てしまった。
僕ってこんなにかっこ悪い人間だったっけ。
彼女の前ではかっこよくいたいのに、かっこ悪いままだ。
情けなくて反吐がでそうだ。
シャワーから上がり、バスタオルで髪の毛を拭きながら部屋へ戻る。
そして呆れたと言うか絶句したと言うか。
ベッドの上でが気持ちよさそうに眠りこけていた。
自分の部屋に戻ったんじゃないのか。
まだ僕に言いたいことがあったのかもしれないけど、そんな感じはしなかった。
もしかしたら、何か考え事をしているうちに眠ってしまったのかもしれない。
無防備すぎる。
眠っているの顔を覗きこめば、幸せそうな顔ですやすやと寝ている。
それを見て、僕は肩を竦めた。
「どんな夢を見ているんだか。可能性のある夢だといいね」
寝ているの前髪をかき上げ、僕はその額に唇を寄せた。