第20章 幸福
炎が消え去った後、卵ほどの大きさの真珠のような玉があった。
五条悟はそれを手に取り、私に見せる。
「それが"幸福"?」
「そう。無事に捕まえることができた」
「死んだのか?」
「"幸福"を殺すことはできません。これは……休んでいる、という表現をした方が正しいのかもしれません」
「五条悟のアレをくらっても死なねえとか頑丈過ぎねえか?」
「傷はついたよ。ほんの少しだけだけど。だから休むんだよ。怪我をしたら休む。これは鉄則」
ほんの少しの傷って……。
五条悟でも祓うことができないものがあるのか。
人間が夢を見続ける限り、"幸福"は死なないのかもしれない。
「もう二度と逃げ出さないように上にはきつく言っておいてください」
「言うだけ言ってみるよ。無駄だと思うけど」
こうして私達の任務は終わった。
何時にもまして疲れた任務だった。
五条悟はいつもこんな任務を一人でこなしているのだろうか。
私の目標は、雲の上よりも遠く感じる。
それでも、私は今日一つ大きく成長した。
それだけでも実りある任務だったと思うことにしよう。
"幸福"が何処からやってきたのか、どうして生まれたのか、なんのために存在しているのか、誰にも分からない。
いつか本当の幸福をもたらしてくれるものなのか、いつかはそれを受け入れる時がくるのだろうか、何時かはその恩恵を受けるに相応しい存在になれるのだろうか。
いくら考えたってその答えは見つからない。
だけど、そういう日がいつか訪れたらいいなと思う。