第20章 幸福
――五条悟side――
「逃げ出した?」
上層部に呼ばれた僕はらしくない素っ頓狂な声を出してしまった。
「あれの管理はあなたがたの管轄でしょう。怠けんのも大概にしてくださいよ」
はぁー、と深いため息を吐いて頭を掻いた。
今日は久しぶりのオフの日だと言うのに、何が悲しくて休日出勤をしなければいけないんだ。
呪術師に休日はないようなものだけど。
過労死したら末代まで呪ってやる。
「で、今"アレ"はどこにいるんです?」
なんで逃げ出したか、なんて考えなくても分かる。
純粋な魂の"アレ"は、時折逃げ出そうとする時期がある。
その度に上の連中が逃げ出さないように結界を張っている。
しかし、夏油傑の百鬼夜行であったり、虎杖悠仁の両面宿儺の受肉、特級の襲来など諸々重なりそれどころではなかったらしい。
その隙に"アレ"は逃げ出した。
というわけだ。
言い訳に過ぎない。
職務怠慢と言っても過言ではないね。
だけど、"アレ"が逃げ出したとなれば早くとらえないと大変なことになるのは明白。
そして"アレ"は今、イギリスにいると言う。
なんで外国に行ってんだよ。
海外旅行気分だったのかは知らないけど面倒なことばかり起こすようだったら、その場で祓うぞ。
「私一人では骨が折れそうなので、何名か呪術師を連れて行きますが、よろしいですね」
憂太がいれば迷わず連れて行ったが、今はいない。
さて、誰を連れて行こうか。
そう考えながら、僕は堅苦しい部屋を後にした。