第19章 旅行
――夏油side――
あの後、朝食を食べ終えた私たちは大涌谷へと行った。
ロープウェイに乗って早雲山から大涌谷へ向かう途中、眼下に広がる谷底の景色は迫力で満ち満ちていて、既に硫黄の匂いが漂っていた。
ロープウェイを降りると、その匂いは更に色濃くなる。
今もなお硫化水素を含む噴煙が上がり続けている大涌谷の岩石は粘土化し赤茶けた山肌が見え、樹木も立ち枯れている。
それらを目にしながら、私たちは名物である黒タマゴを食べていた。
「黒たまご食べると寿命が7年伸びるっていう言い伝えがあるんだよ」
「じゃあ食い続けてたら死なねえのか。みんな食いにくればいいのにな」
「……そうだね」
五条悟がどこか残念そうな顔をして私を見た。
なんでそんな顔すんだよ。
だっていっぱい食ったらその分寿命伸びるんだろ?
死にたくないならここに来ればいいって話じゃん?
「たまにオマエそういうところあるよな」
「どういう意味?」
「別に……」
最後の一口を口に入れた伏黒。
伏黒の言っている意味がわからなかった。
大涌谷を満喫し、そろそろ高専へ戻ろうということになった。
再びロープウェイに乗って箱根に戻り、ロマンスカーに乗って高専へと戻った。