第19章 旅行
のお腹に腕を回しより深く密着する。
痩せすぎでも太すぎでもない、ちょうどいい塩梅のその身体。
女性らしい柔らかい肉付き、かと思えば呪術師らしい筋肉もある。
今すぐにも押し倒して抱き潰したいけど。
なかなか手が出せないのは、彼女を大事にしたいと思うから。
僕ってこんなに殊勝な生き物だったかなぁ。
硝子が知ったら爆笑するだろうな。
静かな沈黙が数秒続き、さすがに会話をしなければ悟君が起き上がっちゃう。
意識を別方向に持って行かなくては。
この静寂は僕にとっては毒だ。
「そう言えば、に誕プレ渡してないよね、僕」
話題をなんとか振り絞った結果、彼女の誕プレの話になった。
昨日、みんなが渡している中僕だけが渡していない。
というか渡せないんだけど。
一週間後にそれが届くから。
「貰ってない、けど。ていうか、買ってたのかお前」
「勿論、買うに決まってるでしょ」
買わない、なんて選択肢があるわけないじゃん。
馬鹿なの?
ていうか、耳赤くない?
上せたようには見えないから、照れてたりする?
確信的なものが欲しくて、僕はわざと彼女の耳に自分の唇を寄せた。
「一週間後、あの家に来て」
「……っ!!」
低い声で、そう言えば彼女は僕の腕を払い耳を抑えた。
今度は耳だけじゃなく顔も真っ赤に染め上げて。
………これって、期待してもいいってこと。
こんな反応されちゃ、そう言うことだって言ってるようなもんでしょ。
「か、からかうな……」
「からかってないよ」
からかうわけがない。
僕は本気だ。
こんなに本気で誰かを好きになったことなんて一度もない。
だけど、僕の本気は彼女には届かなかった。
期待しちゃったけど、僕の勘違いだったようだ。
湯船から上がる彼女の背中を見送り、僕は一人取り残された。