第19章 旅行
そう思うながら僕が静かに部屋を出て、離れの露天風呂へと向かった。
廊下を歩きながら、外を眺める。
朝霧から見える景色はどこか別世界のような雰囲気だ。
幻想的というか神秘的というか。
色とりどりの紅葉の葉や鳥の鳴き声、川のせせらぎが余計にそうさせているのかもしれない。
露天風呂に着いて、浴衣を籠の中に入れる。
その時、中からお湯を流す音が聴こえた。
誰か入っているのか。
聞こえる音はひとつだから一人、か。
女だった場合は、離れて入ろう。
そう思いながら露天風呂の扉を開けた。
その音に、先に入っていた人物が反応する。
見覚えのある顔が驚いた表情で僕を見ていた。
「なっ……!!」
「おはよう、」
まさか入っていたのがだったなんて。
知らない女だったら離れて入るつもりだったけど、知ってる女だから離れるどころかくっついて入っちゃおう。
白く濁るお湯に浸かっているせいで、の裸がちゃんと見れない。
のに、律儀に彼女は両胸を隠した。
散々抱いて抱かれた仲なのに、まだ恥ずかしいんだ。
かーわいっ。
「なんで、お前……。ここ女風呂だぞ……」
さっきからずっと餌を待ち望む魚のように口をパクパクさせていたがようやく口を開いた。
「なんでって……この時間、ここは混浴だよ」
もしかして知らないで入っていたのか。
衝撃を受けたようなアホな顔をしているあたり図星だろう。
ちゃんと確認しないとだめだろ。
もしここに他の男がいたらが食われちゃう。
そうなったら僕が殺すけど。