第19章 旅行
誰か私を褒めろ!!
この状況で私は平常を保てているんだぞ!!
自覚する前と変わらないこの態度!!
演技力が高すぎないか。
日本アカデミー主演女優賞取れるぞ!!
私のお腹には五条悟の筋肉質の腕が巻かれている。
声を出さなかった事を誰か本当に褒めて。
じゃないと、この状況に私がついて行けない。
自覚した瞬間になんでこんな目に遭わなきゃいけないんだ。
なんの耐久レースだよ……。
「そう言えば、に誕プレ渡してないよね、僕」
今まで静かだった空間に五条悟の声が響く。
誕プレ……?
「貰ってない、けど。ていうか、買ってたのかお前」
「勿論、買うに決まってるでしょ」
心臓が大きく跳ねた。
五条悟が私のために誕生日プレゼントを買ってきてくれた。
それだけでドキドキするなんて、単純すぎだろ。
鼓動の激しい心臓を抑えていると、私の耳に五条悟の吐息がかかった。
「一週間後、あの家に来て」
「……っ!!」
低音ボイスが直接脳に響いて、私は五条悟から離れた。
ばしゃん、と湯が波を立てる。
吐息のかかった耳を抑える。
真っ赤に染め上げる顔は確実に五条悟に見られている。
五条悟はどこか楽しそうに嬉しそうに笑っていて。
「か、からかうな……」
「からかってないよ」
どうだか。
自分が風呂に入っていて裸だと言う事も忘れて、湯船を出る。
からかっているようにしか見えないから、なんの期待もできない。
期待をしてはいけない。
ああ、そうか。
虎杖もずっとこんな気持ちを抱いていたのかもしれない。
確かに生殺しだな、これは。
ちゃんと、返事をしよう。
そう決めて、私は浴衣を羽織った。
そして気付いた。
私、浴衣着れない。