第19章 旅行
「でも、良かったじゃない。ちゃんと自分の気持ちと向き合うことで来たでしょ?」
「……………………どう、かな」
白い歯を見せて笑う野薔薇。
自分の気持ちと向き合うって、つまりは、そう言う事だろう。
どうだろうか。
今でも逃げたい気持ちはある。
隠したい気持ちもある。
認めたくない気持ちも。
でもきっと、その感情こそがもう、そうなんだろう。
私は、私を好きになってくれない奴を好きになった。
たったそれだけのことを知るのに、どれだけ体力と精神を削ったのか。
恋って……疲れる。
「でも、悟か~。望みは薄いな」
禪院真希が湯呑を呷った。
この話をした直後にそう言う事言うか、と思ったが私もそんな気はしていたから何も言わなかったし、他の連中も深く頷いていた。
「仮にも教師と生徒だし」
「しゃけ。こんぶ」
「わかる。執着しなさそう。とっかえひっかえってやつ?」
「まぁ、振られた時は私達が全力で慰めてやっから、思う存分振られてこい」
「ちょっと待て。なんで告白するみたいな雰囲気になってんだよ。しねえわ」
「え、しないの?」
きょとんとした顔で首をかしげんじゃねえ、野薔薇。
するわけがねえだろ。