第19章 旅行
「あんたさぁ、"クレイジーラブ"って知ってる?」
おもむろに野薔薇がそう言ってきた。
クレイジーラブ?
直訳で"狂った愛"。
「知らない」
「でしょうね」
と、野薔薇はポテトチップスをひとかけら摘まむと口の中に入れた。
「私も伏黒から聞いた話だから、あんまり上手に説明できないけど、実際にあった"恋愛"らしいわよ」
野薔薇はお菓子を食べながら、そのクレイジーラブとやらを説明しだした。
1957年、アメリカのニューヨークで実際に起きたバート・プガシュとリンダ・リスの恋愛物語。
後にこの話は映画にも成程、アメリカ中が驚愕したと言われるほどの純愛とも狂愛ともとれるものらしい。
話しはこうだ。
優秀な成績で大学を卒業したバート・プガシュは弁護士となった。
当時31歳だった彼は21歳と10年下のリンダ・リスと出会い一目惚れをした。
リンダに夢中になったバートは彼女を振り向かせるためにいろんな猛攻を仕掛けたと言う。
最初こそ、年が離れているという理由で相手にしなかったリンダだったが、自宅まで花を届けたり、電話をしてくる彼に少しずつ心を開いていったと言う。
そして、二人は付き合うことになったという。
ここまで聞けばどこにでもあるような話だ。
「でも、バートには奥さんと子供がいたのよ」
と、まさかの浮気発言。
でも、正直この展開もありきたりだ。
どこがクレイジーラブなのだろうか。
疑問に思っていたが、それはすぐに掻き消された。