第19章 旅行
「で?告白の返事は?」
「…………まだ、です」
「まだしてないの⁉何か月経ってると思ってるのよ‼」
「まだ、一ヶ月経つか経たないかだよ」
「まだ、じゃない!!もう、だよ‼告白の返事にどんだけ時間かけとんじゃ、おのれは!!」
むきゃーと騒ぐ野薔薇は私の肩を掴んでガクガクと揺らした。
その度にお湯が波打ち、淵から零れて排水溝へと流れていく。
「野薔薇落ち着け」
「落ち着いてられますか、これが」
「お前の言いたいこともわかる。だけど、ここ一応客室内とはいえ、露天だからな。外まで聞こえてる上に、もしかしたら隣の男子まで聞こえてる可能性あるぞ」
「………はい」
禪院真希の注意を素直に聞き入れた野薔薇は、ちゃぷんと静かに湯船に沈んでいく。
掴まれた肩が若干痛い。
強く握りすぎだ。
「この話は風呂あがってからにすっか」
「今盛り上がってるのにですか?」
「だからだよ」
「え?」
「のぼせちまうだろ?」
にやりと含みを持たせるようなその笑みを浮かべる禪院真希。
うまいこと言いやがって。
顔面半分を湯船に沈めて、ぶくぶくと息を吐いた。
3人で仲良く風呂を上がり、私はまた禪院真希に浴衣を着せてもらった。
風呂をでて、髪の毛を乾かしたり、お肌の手入れをしたりしながら、会話は先ほどの話題へと持って行かれる。
「さっきの続きだけど、なんで虎杖に返事をしないのよ?」
「なんて?ドライヤーの音で聞こえない」
「あーもう!!全部吐いてもらうから。それまで絶対寝かせてなんてあげないから」
「だからなんて?ドライヤーで聞こえないって」
「お前らうるせえ」
ぱこん、と禪院真希に頭をはたかれた。
野薔薇がうるせえから私まで巻き添えくらったじゃねえか。