第19章 旅行
「じゃあ、俺からも~」
パンダがゆっくりと立ち上がり、部屋の隅まで行きプレゼントの入った袋を渡してきた。
「俺と恵と棘から。3人で選んで買ったやつ」
中身は、色木編みのコースターと黒タマゴ肌マスク、そしてすずらんの香りの練り香水だった。
「コースターが恵で、肌マスクが俺、香水が棘だぞ」
「うわ、まじで嬉しい。ありがと……」
素直に感謝を伝えれば3人は嬉しそうに笑った。
「私らは部屋戻ってからな」
「男どもよりもいいものだから期待しといてよ」
「もらえるだけで十分だわ」
誕生日を祝ってもらえるのはいつ以来だろう。
やばい、普通に泣きそう。
大切にそっともらったものを袋の中に閉まっていく。
私の事を考えて買ってきてくれたんだ。
私の宝物だよ。
頬が自然と緩んでしまう。
あいつらに傷つけられた痛みなんて、吹き飛んでしまうほど。
私は、幸せ者だ。
「てか、悟は?」
「そこで寝てる」
「なんで?」
畳の上で寝息を立てている五条悟。
思えばずっと静かだった。
こういう時、あほみたいに騒いでからかっておちょくるはずなのに。
違和感の正体は、爆睡していたせいだったのか。