第19章 旅行
深い息を吐いて、私は空いている席へと足を運ぶ。
すると虎杖がものすごくニコニコしながら手招きをしていて、自然と足がそっちへと向かった。
「浴衣似合ってんね」
「そうか?」
「うん、ちょー綺麗」
「………っ」
空いた口が塞がらない。
ぽぽぽと顔が熱くなるのがわかる。
こいつ、みんながいる前でよくそんなことを口にできるな。
見てみろ。
みんな驚いて目が飛び出そうな勢いなんだけど。
「大胆だな、悠仁。恵も見習えよ」
「何をですか……」
伏黒の隣に座っていた禪院真希が肘で伏黒の肩をつついた。
不機嫌な表情をした伏黒だったが、まあでも虎杖のこういうところは見習った方がいいと私も思う。
「ほんじゃま、食べようか」
五条悟の言葉に、私たちは両手を合わせた。
「いただきます」
テーブルの上に乗っている懐石料理はどれも箱根の山の幸、相模湾や小田原の海の幸をふんだんに用いた料理となっていた。
どれもこれもおいしくて、というか刺身が真面目においしかったし、お吸い物はそれこそ海の味そのものというべきだろうか。
ずっと食べていられるなって、正直思った。