第19章 旅行
「誰にも理解できないなら、僕が理解してあげる。お前の痛みも苦しみも、深い傷も」
「………」
「だから、甘えていいんだよ。甘えて甘えて、強くなればいいんだから」
「まともなこというお前って気持ち悪いな」
「そんなこと言っていいのか?この甘味、あげないぞ」
ちらちらと見せつける様に、僕はわらび餅を口の中に入れた。
夕食後に食べようと思ったけど、我慢できなかった。
こしあんが口全体に広がってすげえうまい。
にもこのうまさを共有したくて口に運べば、閉じたままの唇にわらび餅の粉が付着した。
え、なんで口開かないの。
普通食いもんが近づいてきたら口開かない?
少し力を入れて押しつければ、ゆっくりと開いてわらび餅はの小さな口の中に吸い込まれていった。
唇に付いた粉を舐めとる真っ赤な舌がエロくて、生唾を飲み込む。
バレてないよね、これ馨に。
その後、僕とは一緒に手を繋いで食べ歩きをした。
一つの物を一緒に食べたり、景色を眺めたり、くだらない話をして盛り上がったり。
僕が何か言うたびに文句を言って、時折小さく笑って、その後必ず泣きそうな顔をした。
やっぱり、僕はを笑わせてあげることはできないみたいだ。
二人肩を並べる光景は、どこからどうみてもデートなんだけどなぁ。
デートみたいだと思うたびに。
胸の鼓動が鈍くぼやけた。