第19章 旅行
の手を引いて店を出る。
嫌がることもなく暴れることもなく大人しくついて来るところを見ると、相当まいっているんだな。
は野薔薇みたいに神経が図太いわけではない。
どちらかというと繊細な方。
よく呪術師やれてるなって思うほど、その精神は儚く脆い。
だからすぐに傷つくし、その傷を癒すのに時間がかかる。
相談すればいいのに相談せずに一人で抱え込んで、それが当たり前だと思う所が傑に似ていて本当にムカつくよ。
何度も相談しろって言ってるのに。
その時、引っ張られているの嗚咽の声が聞こえた。
え、まさか声に出てた?
それで泣いてるとか?
「泣くなよ」
「泣いて……ないっ……」
「鼻水垂れてるから」
「これ、は……心の汗、だし……」
「きったな」
見栄っ張りの強がり。
だけどあいつらの虚勢なんかよりはずっとずっと綺麗だと思う。
泣きやまない彼女を近くの公園まで連れて行き、暫く待つように言えば僕の言うことを素直に聞いてくれた。
こういう時でしか素直にならないのがネックだよね。